専門工事業者の
今後のあり方探る 大競争、構造変化の時代に
建設省建設経済局建設振興課 課長 佐々木 基
多様な建設生産・管理システム形成
重層下請構造は変化も
従来は「ゼネコン-専門業者」の「一括請負方式」がほとんどであったが、近年では「分離発注」「異業種JV」「CM方式」といった多様な生産・管理システムの方向性も示されており、力のある専門業者には新たなチャンス到来の時期といえる。
このうちCM方式は米国の建設工事額のシェア三分の一を占めているもの。検討すべき課題は多いもののメリットとして「生産効率の向上」「コストの透明化、低減化」「従来の”しがらみ”打破」が挙げられる。その反面 、専門業者にとっては競争の激化が予想され、さらにゼネコンの淘汰も必至となるなど、普及すれば大きな変革が見込まれており、意欲ある企業にはチャンスと言える。
また一方で、コストダウンの進展により重層下請構造も変化の可能性を秘めており、付加価値を伴わない取引きが「中抜き」と対象とされるケースも想定される。
経営力・施工力強化のために
戦略ドメインの設定が必要
経営力・施工力強化のためには、「市場の将来性」の把握および、どこで勝負するかについて「戦略ドメインの設定」が必要となる。
そして競争力強化のための課題は
1. コストダウン、コスト管理能力の向上
2. 差別化・高付加価値化の追及
3. 専門工事業者の評価システムへの対応
4. 経営者の意識改革
の4点であり、その中でもとくにコスト(=原価)管理能力が重要となる。ここでは「どんぶり勘定からの脱却」(=根拠の無い安値受注はしない)「採算の合わない仕事は受けない」の二つを徹底を呼び掛けている。この二点は建設施工額の七割を占め、本来主導権があるはずの専門工事業者が現在の立場に立たされている理由でもあると考えられている。
また、企業連携等新たな組織のあり方の模索、リフォーム、環境、福祉、リサイクルなどの新分野への進出、情報技術(IT)の活用なども検討すべき課題として挙げている。なお業界団体についても、今までの「護送船団の中核」的役割から「意欲ある会員企業の支援機能強化」が求められると記している。
元下関係の適正化
対等なパートナーシップの構築・強化を
元下関係の問題点は深刻化している。指値発注の増加や支払い条件の悪化、「価格のみ」の発注先選定は労働条件の悪化や品質低下が懸念され、結局、元請が自らの首を絞めることになり、これがひいては建設産業そのものの破綻につながりかねない。
この中で元下関係の構造も大きく変化しており、専門工事業者がシェアの七割を担う時代となっている。(15年前は約五割)。元請現場所長の裁量 権も縮小の一途にあり、現状の元請を支えているのは、旧体制の”しがらみ”だけではとの見方もある。このような状況から、元下関係の今後のあり方として、下請が元請を逆評価し選別 するような、「対等なパートナーシップの構築・強化」を進めるべきである。また、下請け業者は「できない仕事は受注拒否」も選択肢に入れるとともに、施工体制台帳の活用強化、さらに行政も「民民契約の問題」への介入も検討しているという。
また、従来は元下関係の中核とされてきた協力会組織も市場環境の変化から、元請側も選択を強化し、系列外受注が進展しており、技術、品質、安全を軸とした役割変化と再編が進んでいる。
将来戦略の道しるべに
イノベーション戦略の概要
専門工事業イノベーション戦略とは、専門工事業者の経営革新や将来戦略の道しるべ(指針)として今年七月に建設省から公表されたもので、専門工事業者の今後のあり方を提示した内容。業種や企業規模、元請能力の有無は問わず、経営革新や競争力・施工力強化の意欲がある専門工事業者を対象としている。
その背景には品質、コスト、技術などの競争が激化する中、建設総投資額は縮小見通 しにあり、このままでは全建設業者の生き残りは不可能との考えがある。その一方で、現状、元請施工額の約七割が専門業者に外注されており、生産プロセスの中核は専門業者であるといえることから、努力すれば新たなビジネスチャンスの可能性もある。
このため、直接施工に携わる専門業者にスポットを当て、
1. 新たな建設生産・管理システムの構築(=多様な道の模索)
2. 意欲ある企業の経営力・施工力の強化
3. 元請・下請け関係の適正化
4. 戦略的な人材育成・確保・活用
を目的に作成したのが今回のイノベーション戦略である。
人材の確保・育成
これからの10年は生き残りをかけた”勝負”に
人材の確保育成をめぐる問題として
1. 中長期的には技能労働力不足の可能性
2. 体系的な人材育成体制の欠如
3. 人材育成へのインセンティヴが弱い
4. 従弟制的な技術・技能の継承には限界
の4点が指摘されている。人材育成の方向性としては、企業における戦略的人材育成の推進およびそうした企業の支援、適正な評価。または基幹技能者、多能工の確保・育成・活用さらには技術・技能のDB化、マニュアル化などが挙げられる。また行政、業界、各企業の協力による「ものづくり」の魅力のアピールや新分野の人材育成と教育訓練、情報技術を活用できる人材の育成なども求められる。
終わりに…
従来の秩序崩壊はもはや時間の問題である。大きな流れを見極め、生き残り策を講じることが必要。そのためにも、自社にとってのキーワードとなる”差別 化”のポイントを明確にしなければならない。
今後の企業経営の基本理念は…
これからの十年は陶汰されるか生き残れるかの勝負である。エンドユーザーである国民の期待に応えられる専門工事業者となるためにも、「活力と想像力を有する企業体質への転換」が求められる。
元下関係の改善と適正価格の受注
両団体会長メッセージ
空調設備・給排水衛生設備における主要業種である配管・ダクト工事業は、現場において今後ますます品質管理・工程管理・安全管理などの重要な役割を求められている。その反面 、現実には適正価格との大きな距離があり、業界そのものの存続が危ぶまれているのが現状である。
本年七月に建設省より公表された「専門工事業イノベーション戦略」は、業界の新しい方向性を示す指針として提示されたものである。一方、都心に集中したビッグプロジェクトにより超繁忙が予測されるこの時期に、
1. 元・下関係の改善
2. 訂正価格での受注
こそが、いま両団体の活動に与えられた使命と考える。
「元・下関係改善」とは、契約の対等制と支払い条件の改善、追加工事や手直し工事の公正な精算であり、さらには、生産性向上のための現場施工管理技術の強化・改善を元請に求めることである。
次に目下の最重要課題である「適正価格」とは、言うまでもなく請負の一方的な指値によるものではなく、前向きに努力する企業の経営が、将来的にも継続できる価格のことである。
以上の観点から、両団体の果す役割がますます重要になってくる。現状の団体活動をさらにステップアップさせ、将来を見据え、発展に向けて努力する会員企業をバックアップしていかなければならない。
従って、会員各位の賛同のもと「元・下関係改善につとめ公正な取引を実現しよう」「赤字受注から決別 し適正価格で受注しよう」の二点を両団体共通のスローガンとして掲げ、空調・衛生総合機材展で結ばれた「友情と協調」をベースに、両団体は空調設備・給排水衛生設備業界の発展に寄与することを誓うものである。 |