混迷深まるダクト業界

業界を襲ったトリプルパンチ
立ち上がれるかダクト業界

全国ダクト工業団体連合会 副会長 岩瀬猛司

今ダクト工事業界は存亡の危機に直面している。健全な経営を阻害する要因の増大と、発注形態の変化によってである。


発注価格の低下
 阻害要因の最もたるものが発注価格の低下。採算を考慮に入れればとても請け負える水準にないものが多く、一方で、それでも発注せざるを得ないという事情もあり、それがまかり通 っている。こうしたことは今日に始まったことではないが、その長期化が当然ながらダクト業者の経営を確実に悪化させており、業者の耐えうる限界近くに達している。
 そこで、以前より元請各社で組織する日空衛に、全ダ連を通じてこうした事態の改善のため適正価格で発注を要請してきているが、実現に至っていない。ただし、価格に関しては、市場経営の下、個々の取引に委ねられるとの原則論もあり、それ以上思い切った方策はとれないでいるのが現実である。
 最後は、発注者側にダクト業者と共生するとの認識にたってもらい、こちらの実情を汲む形での発注価格の設定をしてもらうしかない。従って、理解の得られるまで継続的に要望を提出していくことになる。


契約条件の不透明性
 適正価格での発注の実現を継続課題としつつ、”即時解決”と強調したいのが契約条件の透明性の確保。実は、この問題はダクト業者の経営を圧迫する度合いを高めていて、そのため、全ダ連でも、スローガンに掲げて実現に取り組んでいる。この件については建設省も文明化する方向での施策を打ち出しているが、ほとんど効果 はないとされている状況といえる。
 この件で総合設備工事会社に望むことは、契約段階で価格、支払い、条件まで明文化し、かつ早期に確定すること。しかし、現実は、値決めをせずに施工に入っている。施工期間は長く、この間、材料費や協力業者への支払を立替えることになる。今は、その負担が重い。
 しかも立替え支払いの額も1億から2億近くにもなることがある。そうなると経営的にはタイトになる中での大きな負担のため銀行のつなぎ融資により窮状を凌いでいる。総合設備工事会社の決算は押しなべて良好であり、今のところ不良債権化するおそれは低いが、可能性はゼロではなく、そうした危険性を抱えての立替え払いである。
 値決めのないまま工事を進めること自体、経営を不安定にする要因であるが、それに立替え払いの負担が加わっていることが問題。しかも、工事価格は、値決めの最終段階で、『予算がこれだけだから、この金額で』という形で、交渉というより一方的に決定されるのが通 例である。ダクト工事業のみならず、中小専門工事会社のドンブリ勘定的経営が時に批判されることがあるが、その背景にはこうじた事情もある。そこで、契約書に基づいた受・発注の実現を緊急の課題として総合設備工事会社側に望みたい。
 ダクト工事会社におけるこうした立替え支払の負担は長期に及ぶ。値決めそのものが工事が始まってから相当の日数を要していることに加え、通 常、支払は請求から1~2ヶ月後であり、中味は現金三、手形七の割合でなされる。中には、ダクト業者の窮状を汲んで五対五のケースもあるという。「契約の透明性確保は、価格問題と異なり、総合設備工事会社の一存で実現可能な問題であるので、ぜひ早期、解消のための配慮を願っている。」


疑惑深まる材工分離
 請け負い額や支払面の問題に加え、ダクト工事業には新たな対応すべき課題が示されている。材工分離方式の導入がそれで、これまでにない施行法であり、発注方法の変更を伴う故に影響は大きい。材料であるダクトと、工事を分離して発注する方式で、ダクトの製作から施工までを一貫して請け負うことを基本としてきた従来の慣習を根底から覆す発注方式の出現であり、それが導入となれば、ダクト業者は、製作会社と施工会社に二分されることになる。総合設備工事会社主導でなされている新しい発注方法で、同業界大手が試行、その結果 如何によっては他の設備会社も導入の構えを見せている。
 材・工分離とする発注方法そのものについて賛成とか反対をいう立場にないが、なし崩し的に導入されることを心配している。仮にそうされると、ダクト業界が混乱することは必至。 同業者の大半は製作工場と現場施工の両分野に人員を配置し、生産設備も抱えている。それが吊り込みだけとか、製作のみとなれば、専業の再構築をせざるを得ない。それには時間と資金が必要。勿論、その前提として詳しい説明を期待しているのだが。
 推測するに、これはコストダウンの方策の一つとして構想された工法なのであろうが、もうひとつ不安に感じているのは、製作会社と施工会社が別 々で現在の品質を維持できるのかということと、その導入がダクト業者にとって長期的にどんな結果 を生むかということ。短期的に混乱することは目に見えているが、長期的に見て我々の業界にとってプラスならば導入も止むなしということになろう。しかし、現状ではそのための判断材料が少なすぎる。このまま導入となれば、不安の方が先に立つ。こうした不安を抱えつつも、その導入を視野に入れ、別の方向からダクト工事業の発展を模索しているのが現状である。

(空調タイムスより抜粋、改稿)

《第23号》 1999発行


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